「4分の1の抽選になりますが、よかったら3月9日、コーラルステークスで、ウチのレオノーレに乗ってくれませんか」

 僕に騎乗を依頼してくれたのは、この日が初陣となる調教師の福永祐一先生です。

「よかったら乗ってくれませんか?」

 とんでもない。いの一番に指名していただき、光栄です。

 今回だけは、あえてユーイチと呼びますが、僕とユーイチとは家が隣り同士で、お互い、この世界に飛び込んでからは、ライバルであり、切磋琢磨してきた仲間であり、刺激し合ってきた友でもありました。

 ジョッキー時代から、調教には人一倍こだわりを持ち、自分で馬を作るタイプだったユーイチが、調教師に転身すると聞いたときは、寂しさよりも、どんな馬を育てるんだろう、という興味のほうが勝っていたような気がします。

 レース前、記者の人には、「僕に気を遣って依頼してくれたんじゃないですかね」と、ジョークにまぶして話をしましたが、理論派で、勝ちにこだわる気持ちが体中に染みついているユーイチですから、勝つためには、どうすればいいかをじっくりと考え、考え抜いた末に出した騎乗依頼だったような気がします。

――ハナに行けるようなら逃げよう。

 作戦に迷いはありませんでした。ペースを上げすぎると、後方で脚をためた馬に差されるし、緩めすぎると楽についてきた先行集団にのみ込まれます。

 早くもなく、緩くもなく。想定した絶妙なペースに馬もよく応えてくれ、ゴール直前までは完璧だったと思います。

 ゴールした瞬間、体勢はレオノーレ。勢いは猛然と追い込んで来たレディバグ。写真判の結果、ハナ差、わずか4センチ交わされ、2着。「勝ってくださいね」というユーイチからの無言の指示を守ることは、かないませんでした。

 あそこまでいったら、勝ちたかった……というのが本音ですが、これも競馬。福永厩舎の勝負は、まだ始まったばかり。ニコニコの笑顔を浮かべるユーイチ先生と一緒に口取りの写真に収まるのは、次の機会に持ち越しです。

 さぁ、それでは今週末、3月23、24日の競馬です。23日阪神のメインは、G3毎日杯。2戦1勝のパートナー、スマートワイスにとっては、重賞初挑戦になります。

 翌24日のメインは、G1高松宮記念。僕のパートナーは、前走の京都牝馬Sを理想的なレースで勝ったハーツクライ産駒のソーダズリングです。

 これがG1初挑戦になりますが、手応えは十分。「面白い存在になると思います」という僕の言葉を信じて出走に踏み切ってくれた陣営の思いに、全力騎乗で応えます。

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